電気用品には、PSEマークを表示することが義務付けられています。
厳密には対象外の電気製品もあるのですが、身の回りにある殆どの電気用品は、付いているはずです。

これですね。

国内で仕入れて転売する場合には、製造メーカーや輸入業者がPSEマークを付けているはずですから、心配いりません。
仕入れた側は「PSEマークが表示されていること」を確認するだけでOKです。

しかし、輸入となると話は別。自分たちでPSEマークを表示しなければなりません。
今回はPSEマークの表示までの流れをまとめました。

そもそもPSEマークとは何なのか?

実はほんの十数年前まで、PSEマークは存在しませんでした。
売れそうなものならPSEなんて気にせず、とにかく仕入れて転売する。発火事故が起きても知らんぷり。魑魅魍魎が跋扈するAmazonですから、今でもそんなセラーがいるかもしれませんが、極めて危険な行為です。

2001年4月に電気用品安全法(通称PSE法)が改正施行されました。輸入する場合には経済産業省への届出義務があり、違反と認定された場合は輸入の禁止措置、出荷済み品の回収命令、法人なら最高1億円の罰金等が科せられます。何年か前にホームセンターのコーナンがやられましたが、適当に考えていると大手でも摘発されます。しかも違法行為なので火災などの事故が起きてもPL保険ではカバーされません。保険会社とやりあっているうちに普通の会社なら倒産です。自由を得るためにビジネスをしている人が大半だと思いますが、自分の自由を考えるどころじゃなくなります。

というわけで、いま輸入している商品、またはこれから輸入する商品がPSEに適合しているかどうか、しっかり確認しましょう。

PSEマークの取得、許可・認可という誤解

よく誤解されていますが、PSEマークは表示するものです。
取得したり、許可を得たり、認可をもらったりという性質のものではありません。PSEマークは、製品自体に印字してもよいのですが、大体の製品はシールを貼ります。

じゃあ、そのシールはどうやって作るのか?
許可番号もありませんし、資格も免許も必要ありません。
自分で作れば良いんです。

後述のように電気用品には「これを満たしていればOK」という基準があり、PSEマークはそれを満たしている場合に製造者(輸入者)の責任で表示、貼付できるのです。

電気用品には2種類ある

PSE法で規定されている電気用品には、2種類あります。「特定電気用品」と、「特定電気用品以外の電気用品」の2種類です。

【特定電気用品】とは、上記の♢の中にPSEの文字のもので、難易度が高い方です。輸入される商品で多いものでいうとACアダプタや、コード類です。
【特定電気用品以外】とは、文字通り【特定電気用品】以外のことを指します。上記の◯の中にPSEの文字のものです。丸PSEなんて呼ばれていますが、私がやってきたのはACアダプタ以外は全部こちらに分類されます。ヘアアイロン扇風機などをやってきました。

自家製豆乳が作れるスープメーカーなどもこの【特定電気用品以外】で、とても良い商品があったのですが、食品衛生法の基準をクリアできない恐ろしい成分が検出されたので輸入しませんでした(検査して良かったネ!)

一応経産省のリンクを貼っておきます。

特定電気用品の一覧
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/specified_electrical.html

非特定電気用品の一覧:
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/non_specified_electrical.html

どちらに該当するかわからない場合には、管轄の経済産業局に電話すると、親切に教えてくれます。窓口に行ってもOKです。
が、電気系の専門用語を理解していないとサッパリですのである程度は自分で「これこれこういう理由で、この品目に該当すると思うのですが・・・」程度は言えるようにしてから電話しましょう。

PSEに適合させるための3つの関門を突破する方法

第一の関門、PSE基準適合確認・・・製造工場を突き止めよ!

経産省のホームページにフローチャートが掲載されていますので引用します。
事業届出はフローチャートには最初の方に載っていますが、最初の輸入から30日以内でOKです。

次の<基準適合確認><適合性検査>が難関です。

中国の工場の場合、CE認証をクリアしている事が多いので殆どのケースで<基準適合確認>までは問題ありません。CE認証はIEC規格と整合されており、IEC規格とJIS規格は対応しているものが多いためです。仕入れる前に「PSEって知ってる?」「基準クリアしている?」と聞いて、問題なければまぁ概ね大丈夫。
※あくまでも日本の技術基準に適合している必要があるので、品目ごとに実際に仕入れる際には全部チェックしてくださいね。

ところがこのチェック、タオバオやアリババでの転売業者だとちょっと難しい。

皆さんもAmazonで販売していて、購入者はまだしもまだ買ったこともない人から「どこで仕入れているんですか?」と聞かれて「はい、ここですよ」なんて答えますか?

それと同じで、中国のセラーも工場を聞いても「知らん」「教えん」の一点張りになることが多いからです。
よって、最初の難関は工場を突き止めて直接仕入れることです。

まぁ、その方が仕入れコストも安くなりますね。



第二の関門、特定電気用品の適合性検査証明書(副本)の入手

続いて、輸入したいものが【特定電気用品】の場合。
フローチャート中の<適合性検査>が最難関です。

適合性検査は、指定された第三者機関で行われます。有名なのはテュフラインランドとか、JETです。他にもあります。
検査費用は品目によってかなり幅がありますが、1品目で50万円〜100万円程度はかかると思っておいたほうが良いでしょう。一気にハードルが上がりましたが、これには抜け道があります。

適合性検査は1回やれば良いのです。

つまり、工場が既にその型番で適合性検査を行い、適合性検査証明書を持っている場合にはそれを使って輸入ができるのです。
同じ仕様の商品で、同じ型番でなければいけませんから、工場を突き止める時には「既にPSEは適合性検査をしているか」も条件になりますね。

もちろん、工場と相談して費用をどちらが持つかを決め、適合性検査をするのも選択肢のひとつですが、時間も費用もかかるので、その1商品だけで年商3,000万円以上見込める場合でなければやらないほうが良いでしょう。

で、輸入の際には、この副本が必要です。

副本とはコピーのことではなく、上記のような書類です。「住民票の写し」みたいなものですね。

これは私の会社がACアダプタを輸入した時のものです。深センの工場なのですが、日本の工場かと見間違えるくらい5Sが徹底されています。今でも付き合いがあり、イーウーパスポートの会員さんにもよく紹介しています。

これは本来工場しか発行依頼ができないので、工場に頼むか、委任状を書いてもらい日本で自分で申請します。自分でやれば2万円〜3万円で取得できます。高いですが、検査するよりマシです。なお、この適合性検査には有効期限がありますので、切れた場合は再度検査が必要です。

第三の関門、自主検査

ここまで苦労してやっと輸入できますが、PSEマークを表示する前に最後の難関があります。
自主検査です。

自主検査というくらいですから自分でもやれば出来ますが、普通の検品とはわけが違います。
以下の項目を検査記録として3年間残さなければなりません。

電気用品の品名及び型式の区分並びに構造、材質及び性能の概要
検査を行つた年月日及び場所
検査を実施した者の氏名
検査を行つた電気用品の数量
検査の方法
検査の結果
出所:電気用品安全法施工規則・別表第3「検査の方式」

検査項目は品目ごとに細かく定められています。

特定電気用品 製造工程検査
(適合性検査を受けたときと同じ状態にあるかどうか)
完成品検査
(全品検査。外観、絶縁耐力及び通電について全数行う)
試料検査
(製造方法を変更した時などに行う)

なお、完成品検査は中国工場で行っても良いし、日本に輸入された後に行っても構いません。
但しPSEマークを表示できるのは、完成品検査を行った後ですよ。

完成品検査の項目は3つあります。

外観検査とは、パーツがはみ出てないかや、バリの有無を外から確認するものです。
まぁ、普通の検品ですね。

絶縁耐力試験とは、試験電圧1000Vを1分間流し、漏れ電流が10mA以上流れない事を試験するものです。
万一不良品だと感電する可能性もあるので、絶縁ゴム手袋などを付けて行います。
余談ですが、イーウーパスポートではこの検査機器を揃えて、自主検査を代行していますので会員の方は活用してください。

最後に通電検査ですが、普通の電圧100Vで動作するかも確認するものです。

ここまで完遂すれば、堂々とPSEマークを表示できます。めでたし、めでたし!

特定電気用品「以外」なら、適合性検査が不要だよ!

適合性検査で多額のコストがかかることが分かりましたが、それは特定電気用品の話。
特定電気用品「以外」なら、適合性検査は省略できるのです。

あくまでも検査がいらないだけで、<基準適合確認>は必要ですよ!
ちゃんと工場に確認しましょうね。

自主検査の項目は、以下のように規定されています。

特定電気用品以外の電気用品 電線管類及びその附属品、ケーブル配線用スイッチボックス、ヒューズ、白熱電球、蛍光ランプ、装飾用電灯器具 外観検査
ベルトコンベア及び理髪いす 外観及び絶縁耐力検査
リチウムイオン蓄電池 外観及び出力電圧
その他 外観、絶縁耐力、通電検査

なぜ蛍光灯は外観検査だけで良いのか分かりませんが、ルールはルール。
殆どの品目は、特定電気用品と同じく「外観、絶縁耐力、通電検査」です。

最後に:ルールを守ってビジネスする人が、最後には勝つ

というわけで、PSEマークを表示するまでの道のりをまとめました。
結局、法律(ルール)の解説になってしまいましたが、これが理解できない場合には電気製品には手を出さないほうが良いということです。

冒頭にも書きましたが、Amazonやヤフオク等ではPSEなんて知らんぷりのセラーも散見されます。食品衛生法や電波法などもそうですが、このPSE法ももとを辿れば不良品で不幸になる人を出さないために作られたルールです。日本でビジネスを行う以上、事業者は守る義務があるのです。コーナン商事のように摘発事例もありますが、もし事故が起きたら取り返しのつかない事態になることもあるのです。

しっかりとルールを守り、王道でビジネスをしましょう。
そして「よくわからないけど、売れそうな電気用品があるからやってみたい」という場合には!

その道に詳しいコンサルタントに相談するのが一番です。
もちろん、イーウーパスポートにもPSEに詳しい人間がいますし、工場突き止め調査や、自主検査の代行もできます。
尤も工場突き止めは絶対にできるという保証はありませんが、日々頑張っています。

専門的なことはお金を払って人に任せ、
自分は自分だけができる仕事に集中する。

これが一番です。

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